2012年11月6日

電子書籍ストアはどこがいいのか?

Kindleの日本上陸、Nexus7やiPad miniの発売と電子書籍を取り巻く環境は一気に整ってきたのだが、ではどのストアで買うのがいいのだろうか?使ってみたことのある電子書籍ストアを中心に感想を書いてみる。


Kindle - 意外と大したことがなかった黒船

登場前夜は黒船到来と騒がれたKindleだが、日本版は期待したほどではなかった。まず品揃え。酷評された楽天のkoboよりは多いが、先行する日本の電子書籍ストアには及ばない。他で買えるものがすべて買えるようでなければKindleに統一することができないので減点。これについては今後の充実に期待というところか。

次にアプリの完成度。以前から英語版Kindleアプリを使ってみて、その完成度の高さには感心していたのだが、日本語書籍に関しては期待外れだった。英語版と違ってページめくりのアニメーションやフォントが固定されていて選択の余地がない。日本語対応アプリでも横書き表示の場合は英語版と同じ挙動なので、おそらく表示エンジン自体が横書き用と縦書き用で別なのだろう。そのせいか他の電子書籍アプリにあるような横書きと縦書きの表示切り替えもできない。

北米であれだけ大成功していて、日本進出に長い時間をかけたにもかかわらずこれではちょっと期待外れだ。書籍の品ぞろえやアプリの完成度は今後に期待できるのだが、今すぐKindleが市場を圧巻するとはとても思えない。


Kinoppy - そつなくまとまった優等生

Kinoppyは紀伊國屋の電子書籍アプリだ。販売元が紀伊國屋なので、電子書籍のみならず紙の本も買うことができる。iOSアプリでは書籍が購入できないものが多いのだが、KinoppyはiOSアプリからも書籍が購入できる。

特筆すべきはアプリの完成度だろう。いち早くiPhone5の縦長ディスプレイにも対応したし、自社ストアで購入したもの以外でもDRMのかかっていない素のXMDFファイルを読み込んで表示することもできる。ページめくりのアクションにしても縦書き横書きにかかわらず、左右どちらの端をタップしても次のページに移動できるように設定できる。つまり左右どちらの手で端末を持っていても、親指がかかる側の端をタップすると次のページに移動できて読みやすい。どちらかが次のページで逆側が前のページといった一般的な設定も可能だ。もちろんスワイプによる操作もできる。

コミックの場合も一般的なページ単位での表示/ズームだけでなく、対応書籍であればトレースズームといわれるコマ単位での可変ズーム表示も可能だ。これは携帯コミックでは一般的な表示方法だが、画面の小さい端末では特に有効だ。

また、Kinoppyで購入した書籍はSONY Readerでも読める。これはすべての書籍ではないが、このところ対応書籍が大幅に増えている。おそらくKindle対策なのだろう。KinoppyならiOSでも、Androidでも、読書専用端末でも、そしてKindleがまだ日本では対応していないPCでも読むことができる。

ただ惜しむらくは販売書籍の少なさ。同じブックリスタのプラットフォームを使っているソニーのReaderストアより書籍数が少ない。この点が改善されれば、Kindle対抗の大本命といえるだろう。


BOOK☆WALKER - 隠れた勝ち組

BOOK☆WALKERは角川グループの直売ストアだ。直営だけあって角川グループの書籍に関しては他のストアに先駆けて発売されたり、特別セールがあったりするので目を離せない。

BOOK☆WALKERは書店であると同時に版元でもあるので、BOOK☆WALKERのサイトで本が売れなくても同社の電子書籍であればKindleだろうと他の電子書籍ストアであろうとすべてBOOK☆WALKERの売り上げだ。そういう意味ではおいしいポジションにある。

単に角川グループの直売所としてだけでなく、他社出版の電子書籍も取り扱いを拡大しようとしているので、ますます目が離せない。


パピレス - 孤高のDRMフリー

パピレスは携帯小説のころからある老舗だ。古くからXMDF形式で書籍を販売していたが、そのXMDF形式は他社と違ってDRMがかかっていない。他のストアの場合な専用アプリや認証済み機器でないと読むことができないが、パピレスのXMDF書籍は対応アプリさえあればどの端末でも読むことができる。具体的にはSONY ReaderやKinoppyなどで読める。

ただ最近ではXMDF以外にもドットブックや独自のメデューサ形式など汎用でないものが増えてきているので魅力が減少している。ただ汎用XMDFは専用アプリに比べて取り扱いが面倒なところがあるので、何も考えずに使うなら専用形式の方がわかりやすいのも事実だ。


以上の電子書籍ストアはいずれもマルチデバイス対応だが、最近の流れとしては電子書籍はPCよりもスマートフォンやタブレット端末で読むことを念頭に置いているようだ。実際のところ、一番読みやすいのは6インチの読書専用端末か、7インチの小型タブレットだろう。

北米で圧倒的なシェアを誇るKindleの日本参入で日本の電子書籍販売もKindleに席巻されるのかと思いきや、かえって混沌とした状況になっている。

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